桜が咲く日

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日向の表情は見えないが、何も言わないことからいきなり家に入ってきた私に驚いているのだろう。 「大きくなったな」 その言葉の後すぐ、雲が晴れ、一気に満月の月明かりが私たちを照らす。そして、庭に一本だけあった桜が風で花びらを散らし、パラパラと舞い散った。 その幻想的ですら感じる光景に、私たちはどれぐらい向かい合っていただろう。 真っ黒のパンツに、ホワイトのカッターシャツ。シンプルな装いだが、紛れもなく日向だった。 嫌味なほど大人の男性になっており、洗練された雰囲気に圧倒されてしまう。 昔から、綺麗な顔立ちで人気はあったが、今は大人の男性だ。色気すら感じる彼にクラクラしそうだ。 「何年たったと思ってるの?」 そんな思いを隠すように、視線を逸らすとなんとか平静を装って声をかける。 「そうだな。彩華が俺を避け始めてからは……もう、八年? いや、九年か?」 十年だよ。そんなことを思うも、私は答えることをしなかった。 確かに私から避け始めたかもしれないが、姿を消したのは日向だ。文句を言いたいのは私のほうだ。
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