桜が咲く日

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それで、この場がなぜか特別な気がしてしまった。今どうしてここに日向がいて、また明日からどこへいってしまうのかもわからない。 それでも、今日向に会えたことが嬉しかった。月明かりがサロンの窓ガラスから入ってきて、胸元から見える日向の鎖骨にドキッとしてしまう。 妖艶なその瞳に、私は吸い寄せられるように、距離を詰めていた。 「彩華?」 そんな私に彼は驚いたように、目を見開いた。 「ねえ、日向。また明日にはここにいないんでしょう?」 答えは聞かなくてもわかる気がしたが、あえてその問いを口にする。 「ああ」 「どうしているの? とかそんなことは聞かない」 「彩華どうした?」 私が何を言いたいか理解できないようで、日向がかなり怪訝な表情を浮かべる。 「あのね、この十年、私誰ともできないの」 「できない?」 今度は完全に意味がわからないといった様子の日向。 アルコールというのは本当に怖い。こんな恥ずかしいことを臆面もなく話している自分が信じられない。 でも、また会えなくなるのなら、一度だけ日向と試してみたかった。 誰に触れられても固くなってしまう、この呪われた身体。
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