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真剣に心配している母に、私は曖昧な笑みを浮かべる。出産が尾を引き結構長い間体調が戻らなかったのは事実だ。食事や洗濯などもしてくれ、私は子育てだけに専念できたことは本当に感謝しかない。小さいころから母とは仲が良く、なんでも話してきたと思うが、日向のことだけは別だ。
母は何度も『彩華の初恋は日向君ね』そう冗談ぽく言うことがあったが、そのことだけは認められなかった。恥ずかしかったのか、知られたくなかったのかはわからない。だから、もちろん妊娠した時も父親は絶対に言えなかった。何度も聞かれたが絶対に言わない私を見て、両親はどう思ったのかわからない。
「そうだね、もしかしたら甘えるかも、ごめんね」
このまま一緒の会社にいることができるのかわからない今、仕事を続けたくても難しくなるかもしれない。それに、日向が誰かと幸せになる姿を見たくはない。でも、それで本当にいいのだろうか。日向がもし結婚して、子供が産まれればそのこと瑠香は血がつながっていることになるのだ。
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