天気雨 ー再会ー

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 そんな重要なことを話さないなど許されるんだろうか。今までほとんど弱音を吐いたことがなかった私のその言葉に、母が「本当に大丈夫?」と心配そうな声を上げる。そんな時、廊下からバタバタという音が聞こえてきて、私たちはハッとしてそちらを見た。 「瑠香、出たみたいだね」  私は母に大丈夫という気持ちを込めて、笑みを見せた後立ち上がった。 「ルカー、楽しかった?」 「あーい」  バスタオルごと瑠香を抱きしめる。その小さくて暖かいものを私は守らなければいけない。揺れ動く気持ちを隠すように、私は明るく振舞った。その夜、瑠香を寝かしつけながら、その寝顔をじっと見つめる。  久しぶりに日向を見て、やはり親子だと思った。この目も鼻もとてもよく似ている。産まれたばかりの日のことも、初めて首が座った日も、一歳の誕生日に歩き始めたばかりで転んだことも。日向は何も知らない。
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