天気雨 ー再会ー

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 いくら私の前から消えてしまったとはいえ、このことを知りたかっただろうか? しかし、すぐそんなポジティブな考えは消えていく。私のことなどなんとも思っていないから、目の前から消えてしまうのだ。もう、私の知っている日向という人はいないのだ。今目の前にいるのは、完璧なオーラを纏い、昔の面影などない冷徹な大企業の副社長。ただそれだけだ。今のプロジェクトが終わったら姿を消そう。私はそう思うと、瑠香をキュッと抱きしめた。  それからの日々は日向と完全に上司と部下という関係ができていたと思う。神代さんが真ん中に入っていてくれることもあり、私と日向が直接話すこともなかった。  プロジェクトの時期は忙しかったが、瑠香のことはしばらく両親に甘えることにした。仕事はこの案件を終えたらやめるつもりだ。しばらく迷惑をかけるが、また仕事を探して、それまではバイトでもして家にお金を入れれば大丈夫。そんなことを考えていた。
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