天気雨 ー再会ー

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 日向が先に来ていたことに、少し驚いたように神代さんや加奈先輩も入ってくる。そして時間五分前に、ネット回線がつながれ、アメリカの担当者たちが画面に映った。その瞬間、にこやかな笑みと流暢な英語で日向が話し始める。昔から勉強はもちろんできたが、この若さで年配の海外の重鎮と対等に話す日向に、もはや好き嫌いなんて言葉じゃなく、尊敬と敬意を感じてしまう。  ここまで来るのに、どれほどの努力をしたのだろう。私が彼の邪魔をしてはいけない。そんなことを思いながら、私はその商談を見守った。 「お疲れ様!」  無事こちらに有利な条件で商談は終わり、日向のその声に数十人のスタッフから大きな歓声が起きた。 「みんなのお陰でスムーズに商談がうまく行った。ありがとう」  日向が笑顔を見せれば、そこにいた女性社員たちだけではなく、男性社員も日向を見つめていた。 「もし、時間が許すなら、最上階のラウンジで夕食を用意させるから、食べて行ってくれ」  このビルの最上階には、接待やVIP対応のためのラウンジがあると聞いたことがあるが、もちろん私のような下っ端社員は入ったことなどない。 「え? 役員専用じゃないんですか?」
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