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グラスを置くと、これ以上酔わないようにと、私は美しいテリーヌを口に入れた。サーモンとチーズの濃厚な味に、私はまたグラスに手を伸ばしそうになり慌ててそれを止めた。
「飲めばいいんじゃないか?」
個別に仕事以外で話しかけられたのは、あの初めの日以来かもしれない。日向の言葉に、神代さんが苦笑しつつ口を開く。
「瑠香ちゃん待ってるから、気にしてるんだろ?」
「そうですね」
日向の前で瑠香の名前を出してほしくなかったが、ここで話題を変えても不自然だろう。
「瑠香ちゃんっていうの? 東雲さんの娘さん」
「めちゃくちゃかわいいんですよ! おめめぱっちりで。副社長にも見せてあげたら?」
加奈先輩達には、スマホで撮った瑠香を見せたことがある。それを覚えていたのだろうが、日向の前でなんてことを! 内心焦っていると、日向が「見たい」と言いだした。
「あの、そんな副社長にお見せするような娘じゃないですよ」
「何歳?」
昔の妹のような人間が、母になったことに興味があるのか日向はそのまま質問を続ける。
「えっと、一歳半になる?」
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