天気雨 ー再会ー

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 普通の整形外科はもうしまっているはずだ。小児の怪我を見られる先生が近くの病院にいるだろうか。 「どうした?」  この場の空気を壊したくはなかったが、私は慌てていたのだろう。すぐに私の変化に気づいたようで、神代さんが私に問いかける。 「あの、娘が怪我をしたみたいで。母から連絡があって」 「え? すぐにタクシー呼ぶか?」  神代さんがスマホを出すのを見て、私はその好意に甘えてクロークに荷物を取りに行く。 「え? 副社長?」  後ろでそんな声が聞こえて、私は日向に挨拶をしていないことを思い出す。そして振り返った目の前には日向がすぐそばにいて、私は驚いて目を見開いた。 「あの、すみません。急用でお先に」  矢継ぎ早に伝えた私の肩が急に抱かれ、荷物が手から取り上げられる。 「あの? 副社長?」  意味がわからない私に、そのまま力強くラウンジから連れ出される。そして、エレベータに乗せられた。 「あの。私病院へ行きたいんです!」 「どこの病院?」  そう問いかけれ、私は「S病院です」と答えていた。 「近所のあそこか。怪我って言ったが、どうしたんだ?」
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