天気雨 ー再会ー

32/38
前へ
/73ページ
次へ
 母は心底安堵したような表情を見せた。自分の不注意で孫に怪我をさせてしまったというのは、母も気が気ではないだろう。でも、甘えていいのだろうか。 「あの、それはご迷惑では……」  今すぐにでも大きな病院で検査をしたい気持ちを押さえて言えば、日向は私を見た。 「ご主人に許可が必要ですか? まだ仕事かなにか……」  その時にドキッと胸が音を立てる。両親に口止めをしなければそう思った時には、すでに遅かった。 「ああ、日向君は知らなかったわよね。彩華、シングルなのよ。だからお願いできる?」  その母のセリフに、日向が驚いたように私を見た。そしてベッドに眠る瑠香に視線を落とす。しかし、賢い彼は今は何かを言う時ではないと判断したようだ。 「ストレッチャー持ってきましょうか?」  看護師の言葉に、無言で日向は瑠香を抱き上げた。 「日向!!」  つい副社長と呼ぶのも忘れて、彼の名前を呼んでいた。 「よく眠ってる。大丈夫だ。動かさないように注意する」  そう言うと、瑠香をお姫様のように、大切そうに抱いて歩き出した。そして、待機していた車に乗り込む。 「彩華も乗って」
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2718人が本棚に入れています
本棚に追加