天気雨 ー再会ー

34/38
前へ
/73ページ
次へ
 その言葉に歩き出そうとすると、日向が一緒についてくる。 「俺も一緒に行くから」  今だけは甘えさせてもらおうと、日向と一緒に看護師についていく。その後、瑠香は頭部のMRIや足も見てもらい、問題がないと言われホッと安堵する。 「念のため、明日まで様子を見ますので、今晩は入院してもらいますね」  家に帰って急変するよりは、一晩お世話になった方が私も安心だ。瑠香の無事を聞いた両親は、瑠香の寝顔を見て家へと戻って行った。 「副社長もありがとうございました」  日向の計らいだろう、かなり豪華な個室を用意してもらってしまい、その廊下で私は恐縮しつつ頭を下げる。 「彩華」  少し緊張したような声に、私はビクっと肩を揺らした。 「こんな時だけど、話してもいいか」  先ほどのシングルマザーという言葉に引っかかりを覚えたのだろう。 「あの、費用のことですか?」  あえて違う話題を出して、私は日向に背を向けて病室の引き戸に手をかけた。 「違う」
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2719人が本棚に入れています
本棚に追加