天気雨 ー再会ー

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「こんな細い身体でひとりで頑張ってきたんだろ? 俺がずっとそばにいればこんなことには……」  沈痛なその声に、私は苛立ちにも似た気持ちが沸き上がる。 「俺がそばにいる、瑠香ちゃんも彩華もこれからは守るから……」  何を言っているのだろう。結婚間近で大企業の跡取りが血迷ってしまったのだろうか。同情なんて必要ない。それに一番大切なことを彼は知らない。 「いい加減にして! 日向なんていらないよ! 私と瑠香を捨てたのは日向だよ!」 「え……?」  初めて見る心底驚いた日向の顔に、私はキュッと唇を噛むともう隠すことなどできないと開き直る。 「私は日向しか知らない! 勝手に相手を作らないでよ。でも、もう日向の邪魔なんてしないって決めたの。私は瑠香とふたりで生きて行くの。認知も必要ないし、日向には迷惑をかけないから結婚でもなんでもして」  一気に吐き出してしまい、大きく息をつく。 「今は日向の顔見たくない。瑠香のことは感謝してるけど帰って」  俯いて小さく言えば、後ろから強引に抱きしめられる。 「嫌だ」
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