桜が咲く日

6/17
前へ
/73ページ
次へ
そう思っていたのは私だけだった。それに気が付いたのは、幼馴染という関係ではなく、私がはっきりと日向に恋をしていると感じた十三歳の時だった。 中学生になり、中高一貫の学校に通っていた私の目に飛び込んできたのは、日向とたくさんの友人たちだった。 その中には、大人っぽくてメイクがとても似合う女の先輩も数多くいた。 初めて見る、自分とは違う日向に、なぜか居心地が悪くなる。くるりと踵を返そうとした私を引き留める呼び声。 「彩華」 自分でも初めて感じる嫉妬心。ずっと私のそばにいると思っていたのに、日向の周りにはたくさんの人がいる。その現実を突きつけられた気がした。 「日向、この子? お隣の妹ちゃん」 今でも忘れることができないほど、綺麗な女の先輩の口から発せられた”妹”というセリフ。 「ああ。かわいいだろ」 日向のそのかわいいという言葉が、子供に伝える時のように聞こえてみじめで仕方がなかった。 あの日から、私は日向を避け続けてしまった。淡い恋心と、幼すぎた初恋。 それでもずっと日向は隣にいる。だから、きっといつでも仲直りできる。そう思っていた。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2709人が本棚に入れています
本棚に追加