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 すると、バッグが振動し、私は、慌ててスマホを取り出す。  ――家、着いたか。  連絡先を交換して一発目のメッセージが、それか。  私は、心の中でぼやきながらも、返す。  ――もう、着いてる。  ――そうか。じゃあ、よろしくな。ひとまず、しばらくは、お前の企画の面倒みるって(てい)で。  簡単なやり取り。  私は、スマホをそのまま投げ置く。  あの後、店を出る時、志賀は言ったのだ。  ――見返りとして、オレも、お前の企画、見てやるから。  ヤツも、自分でも、無謀な提案をしたと思ったんだろう。  少しだけ、気まずそうにしながら。  ――いや、まあ、それはありがたいけど……阿賀野さんも、見てくれるって言ってるし……。  けれど、あっさりと返される。  ――この鈍感女!どうせ、いざその時になったら、いきなり二人きりじゃハードル高ぇとか言い出すだろうが、お前は‼  ――ああ、もう、わかったわよ!うるさいわね!  私は、ため息をつきながら、部屋のど真ん中に倒れ込む。  ――くそぅ、痛い所つくな。  心の中でボヤきながら、仰向けに体勢を変える。  そして、目の前にかざした、自分の大きな手を見上げた。  ――……この手よりも……大きかったとは。  不意に、志賀の手の感触を思い出し――思わず悶えてしまう。  阿賀野さんは、見た目どおりの大きさと厚さで、妙な安心感さえあったのに。  ――それに。  話がついたので、部屋を出ようと志賀の手から逃れようとしたが、振り払えず動揺した私に、ヤツは、苦笑いで言った。  ――何で、力で勝てると思ってんだ、お前は。  ――……で、でも、アンタよりもデカイし……。  ――身体のデカさと、力の強さは比例しねぇよ。  そう言って、志賀は、私を見やると、あっさりと続けたのだ。  ――デカかろうが、お前、女じゃん。  私は、再びうつぶせになり、そばにあったクッションを引きずり顔を伏せた。  思い出すだけで、心臓が止まりそうだ。  ――あんな風に――”女”扱いされたのは――初めてだから。  昔から、他の女子と一回り以上大きさが違っていた私は、お約束とも言える、男子からのからかいの的になり、中学くらいからは、体育会系の部活からのお誘いを、平身低頭で断る日々だった。  私は、この図体でも――運動神経など、良くは無いのだ。  何で、人は、身体が大きいと、運動ができるという思い込みをするんだろうか。  他の人よりも大きいから、バスケのゴールに少しだけ近くて、ボールは入りやすいし、少しだけジャンプすれば、バレーのネットから手は出る。  コンパスの差で、走ったら、ほどほどに上位には食い込める。  でも、それは、すべて、一般の学校生活の中でだ。  本格的にやっている部活の人や、プロの人たちに比べたら、ささやかなもので。  大体、私自身、勝負事が好きなワケでもない。  ――だから、一度も企画が採用されなくても、仕方ない、の、一言で終わるのだ。
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