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『珠莉、アンタ、それってどうなのよ』
『そうだねー。でも、珠莉ちゃん、イケメン二人に囲まれて、悪い気はしないでしょー?』
その晩、どうにも耐え切れず、高校からの友人二人にテレビ電話で報告すると、それぞれ、そう返された。
志賀の気持ちは伏せ、同期の男に、友人の彼女になってほしいと言われた、とだけ報告したのだ。
二人にどんなヤツかと問い詰められ、一応、イケメンの部類に入ると言うと、勢いよく食いつかれた。
『何がどうなったら、そんな話になるの』
そう、顔にパックをしながら眉を寄せるキツ目の美人は、栃窪理香。酒メーカーの営業だ。
趣味は、大学時代から追っかけているアイドルの”推し活”。
そして、眼鏡を拭きながらうなづいている、ぽっちゃり、おっとりの可愛い癒し系の彼女は新宮南。工場の事務職。
こちらも趣味は”推し活”――ただし、アニメの方の、だ。
私は、二人に問われるが、眉を寄せて顔を伏せる。
「……そんなの、私が一番聞きたいんですけど……」
『でも、珠莉ちゃん、素敵だもん。だから、白羽の矢が立ったんじゃないの?』
「……南、ちゃんと考えてから、ものを言うのよ」
そう諭すように反論すると、二人に眉を下げられた。
『アンタこそ、その卑屈さ、いい加減直したらどう?』
『でも、理香ちゃん、珠莉ちゃんは高校の時からこうじゃない』
『そうだけどさぁ……いい加減自覚しないと、そろそろ、こっちにも考えというものが』
「理香、怖い、怖い!」
半分本気で怖くなる。
理香は、有言実行の男前。
何かをすると宣言したら――絶対にやり切る。
大学も、就職も、望みは薄いんじゃないかと心配されるようなところを希望し――そして、見事に勝ち抜いた。
だから、やると言ったら、この女はやる。
「まあ、理由はともかく……ほどほどになったら、フラれるつもりなので」
『……それ、意味あるの?』
「わからないけど……私が、男と付き合えるとか思えないし」
『……うーん……ワンチャン無いかなー?』
「無い」
そう言い切ると、二人は、同じように肩をすくめた。
『……まあ、何か協力してほしかったら、言いなさいよ』
『そうだねー。珠莉ちゃん、我慢しちゃうからさ、早めにねー』
「うん。……二人とも、ありがとう」
そう締めて、通話を終える。
そして、そのまま、床に寝転んだ。
畳敷きなので、柔らかさがちょうど良く、たまに寝落ちしてしまうくらいだ。
少し煤けた天井を見上げ、再びため息。
――恋愛って……どうやるんだろう……。
浮かんだ疑問に、答えなど出る訳もなかった。
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