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《食い違い》
「でも猫ちゃんになって不便ではない? 可愛いけど」
「まぁ、魚の匂いがすると追いたくなりますかね。あと、お酒の匂いがすると酔ってしまうとか……」
「酒に関しては未成年だからだろう。……とりあえずだ」
スハラがこちらを睨みつけるようにミナミに視線を合わせた。背が高い分、結構な低さになる。
「お前は墓守も良いなと感じたわけだな。それはなぜだ」
「それは……」
ミナミは昨日の出来事を二人に話した。赤い髪の少年のライラと共に戦い、除霊をしたことを。亡霊と対話をして安らかに眠る少女の姿を。
オリリオがどうしてだが考え込んでいる様子だ。
「そっか……、あの墓地には咎人が居るって噂だけれど、本当ではなかったんだね」
「しかも10歳くらいの少年が、か。――カンバラ様の仰っていたことと食い違っているぞ」
「どういうことですか?」尋ねればスハラは考え込んで「カンバラ様からはこのような話を受けている」人差し指を空に立てた。
「あの墓地ではカンバラ様に呪いを掛けた咎人が居て、そのせいでカンバラ様は神に仕える大祭司になっても、精霊などを従えることができない、と。だが少年となれば話は別だ。カンバラ様に呪いを掛けたのは今から20年くらい前だぞ」
スハラの淀みのない言葉にミナミは三人の若い亡霊を想起した。ジョンとレイリーとハーゲンだ。確か言っていたことがある。
「若い亡霊が言っていました。赤い髪の少年……ライラに埋葬されたときは十数年も経っていた、というのにライラは子どものままだったと」
ミナミの言葉に二人が驚愕をする。つまりライラも呪いを受けているということになるのだ。それはどうしてか。
スハラは考え込み、オリリオは天井を見つめた。オリリオなにかを閃いてミナミの肩を叩く。
「カンバラ様に話を聞けばいいんじゃないかな。そっちの方が早く終わりそうだし!」
「オリリオ……貴様、なにか楽しんでいないか?」
「そ~んなことないよ。じゃあ大祭司様の所へ行ってみよう!」
オリリオに連れてかれたミナミはカンバラに説教が下るなと覚悟をした。だが大祭司室に行ってもカンバラは居なかったのだ。
オリリオが不安げな様子で広大な大祭司室を見つめる。
「どこに行ってしまったのかな? まさか墓地に行ったんじゃ……」
「まぁその可能性もあるな。だが墓地に行ってどうする。ミナミの呪いを解いてくれとでも言うのか?」
ミナミに視線が向けられた。二人の「面倒ごとを押し付けやがって……」などと言うような視線に耐えかねたミナミは猫耳をピンと立てて「墓地に行ってきます~」逃げるようにライラの元へ行くのだ。
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