《赤髪の少年》

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《赤髪の少年》

 その赤髪の少年は小さな少女と遊んでいた。  少女は10歳くらいで少年と同じくらいである。だが一回り小さい。 「ふふっ、楽しいな~!」 「そうだね。でも、これで……あの世に逝く気にはなった、かな?」  少女は顔を塞ぎ込んで「嫌だ」はっきりと告げた。少女の瞳に映るのは憎悪と怨念である。 「私はお父さんにも、お母さんにも愛してもらえなかった。捨てられたのよ? あいつらを呪ってやる。――殺してやる!!!!」  少女の身体がみるみるうちにゾンビのような姿になる。少年が赤い髪を振り乱し、息を吐いた。  隣で黒猫がにゃあと鳴く。 「穏便に済ませようとしたけれどこれは駄目か……。シーシャ。武器に変換して」 「……わかりました、マスター」  黒猫のシーシャは人語で答えれば武器に変貌する。黒い棒に変化したステッキになった。  赤い髪の少年は札を使用し、怪物に駆け上がる。怪物は赤い髪の少年を振り回そうとしたが、少年は右や左へ切り返すような走りを見せる。少年のマントが(ひるがえ)される。  そして跳躍し、札に狙いを定めた。 「かの者を天に召されよ! ――除霊完結」  黒いステッキに願いを込めて放たれた電撃に怪物から少女へと姿を変える。すると今度は聖なる水を少女に振りかけた。  少女が青い炎で燃え上がる。 「な……なんで、私を、人間に?」  少女が問い掛ければ少年はにこりと笑った。 「君を救いたいからさ。怪物のままじゃ可哀そうでしょ?」  少女が大きな零れそうなほどの青い瞳に涙を流す。青いが優しく包まれる炎に少女は天に召されたのだ。  赤い少年が一息吐いて欠伸をしている。するとシーシャが猫ではなく美しい女性に変貌した。  不意に問いかける。 「マスターはいつまで子供なんですか? もう十年以上もその姿でしょう?」 「……そうだね。まぁ、呪いが切れない限り――僕はこの呪いに縛られているのさ」  赤い髪の少年は夜空を見上げる。今夜は新月であった。
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