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《祭司を目指す》
大聖堂の机の端っこで筆記の試験を受けていたミナミは祭司であるオリリオに時間を計ってもらっていた。
ミナミは緑色の長い髪を一本の三つ編みに束ねた祭司を目指す青年である。歳は19歳だ。白いカーディガンにボーダーのシャツを着た、少し背の低めの男の子である。
「はい、そこまで。これから採点するから待っててね」
「ありがとうございます。オリリオさん!」
「いえいえ。ミナミくんにはちゃんと祭司になって欲しいもん」
金色の髪に碧眼の瞳をしたオリリオは微笑んで赤ペンに持ち変える。採点をしていけば……なんと合格ラインまで達していた。
「すごいよ! ちゃんと合格ラインまで達してる。これなら、あとは技術面だけだね」
「げぇっ!? 技術……ですか……」
ミナミのあどけない顔立ちがいっそう青ざめた。どうやら技術面は不得意な様子だ。
「まぁまぁ。僕の精霊だってじきに見えるだろうし……。そんなに肩を落とさなくても」
「なにを言っているオリリオ。こいつが無能だと言うのがよくわかるじゃないか」
声のした方を見れば銀縁眼鏡を掛けた銀髪の男性がこちらに向かってくる。オリリオと同じく祭司の制服を着ていた。
「祭司は精霊や霊と対話をして、最終的には神のお告げを聞く役割を果たす。そんな勉学だけでできるものならなる奴なんて毛ほどにも居るだろうな」
「……スハラ」
オリリオが息を吐けばミナミは「わかっていますよ!」そう答えて大聖堂から逃げ出してしまった。
スハラの厳しい態度にオリリオは窘めるような視線を向ける。
だがスハラも負けずにいた。
「本当のことじゃないか。祭司は皆がなれるものではない。たとえあの小僧が、神に選ばれし孤児でもな」
そしてスハラは事務室へ戻っていく姿を見てオリリオが深く息を吐いてしまった。
「くそぉっ! なんだよ、スハラの分際で俺を馬鹿にしやがって!」
ミナミは大聖堂から出て庭へと向かい、巨木に背中を預けていた。スハラは昔から目の敵にされており、ムカつく奴なのだ。だがそれと打って変わり、オリリオは昔から聖母のように皆に優しい。
そんなオリリオに憧れて祭司を目指そうと奮闘し、今年で5年目になる。だがついてくるのは勉学だけで技術面が伴わない。
「はぁ~……、俺ってそんなに役立たずなのかな。やっぱり俺って……祭司は向いていないのかな」
涙ぐんでしまうミナミに誰かが肩を叩いた。――大祭司カンバラだ。
「カ、カンバラ様!???」
「やぁ、君が元気ないとこっちも元気がなくなってしまうからね。励ましに来ましたよ」
祭司の上で存在である大祭司は神のお告げを聞いて回る。そんな彼にミナミは昔、捨て子であった自分を育ててくれたのだ。
神に選ばれし者の正体はカンバラであった。
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