《出会い》

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《出会い》

 大祭司カンバラのお告げはよく当たると評判だ。神と対話をしているからというのもあるが、周囲の皆の未来さえも占えるほどの力を持つのだ。  そんなカンバラの姿にミナミは憧れを抱いている。尊敬の眼差しを向けているのだ。  カンバラが笑みを深めた。 「ほら、泣かないで下さい。あなたは絶対に祭司になれますよ。私の占いでもそう出ています」 「でも……スハラ様が俺にはなれないって」  ミナミは内心で憎たらしいスハラへ舌を出す。これで自然な告げ口は完璧である。  カンバラがははっと笑った。 「まぁまぁ。スハラもスハラで君のことが羨ましいのですよ。あまり怒らないであげて下さい」 「でも……」 「精霊が見えないのだとしたら、オリリオに聞けばいいのではないですか? でも、これだけは言っておきます。――あそこの墓地には行かないように」  カンバラが指を差すのは墓地が介入している洋館であった。あそこは昔から忌み嫌われている咎人(とがびと)がおり、今でも墓地を彷徨っていると有名である。  だがその代わりに入った者はなにかしらの能力を開花されるというなんとも不思議な噂なのだ。ミナミは次のカンバラの話を聞かずに墓地を見つめる。  カンバラの瞳が鋭くなった。 「ミナミくん。まさかあなた、行こうとしているわけではないでしょうね?」 「えっ、い、いや~そんなわけないじゃないですか!」  たとえオリリオに聞いたとしても「じきに見える」そう言われるだけなのはわかっている。だからミナミはある決意を宿してカンバラの話をはぐらかした。  夜の墓地は恐怖という趣がある。墓地の洋館までやって来たミナミは身体を震わせながら散策をした。 「うぅ……こわっ。怖いなぁ~さすがに。で、でも! あの教科書に書いていたことを実践すれば!」  ミナミは墓地にある井戸に向かい、井戸水を汲んだ。この井戸水は教本によると聖水らしい。  そのまま井戸水を両手に掛けて祈る。祈ることはただ一つ―― 「俺を祭司にさせて下さい。精霊や霊を見えるようにさせて下さい」  すると青い炎がぼぉときらめきミナミを包み込んだ。だが不思議と身体は熱くない。 「これは……なんだっ?」 「君、――その願い引き受けたよ」  誰かがこちらへやってくる。誰だろうかと思い、青い炎のなかで視線を向けると――少年だ。赤い髪をした黒マントを羽織った少年が自分の目の前に立ちはだかったのだ。  赤い髪の少年はニヒルに微笑む。 「僕の名前はライラ。墓守をしているけれど……その前に君へサプライズという名の代価を受けてもらおう」 「……えっ?」  どういうことかわかっていない様子のミナミにライラが右手に携えた黒いステッキでミナミに狙いを定める。  青い炎が消えかかろうとしていた。 「かの者の代価を得て代償を望め」  ミナミの身体が瞬いた。
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