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《変わっていない》
「なんだ、お前。元から猫人間じゃねぇのかよ?」
「違うよ~、この子に呪いを掛けられてこうなったんだ!」
ジョンよりもほっそりとしているレイリーが軽やかに笑っている。同じく中肉中背のハーゲンも顎髭を揺らしながら笑っていた。
ちなみに彼らは人間のようだが人間ではない。なぜならば足がないのだから。
「この子ってね……僕にはライラって言う名前があるんだけど?」
「まぁそう言うなよ若旦那! 猫好きだからって人間を猫にしちゃって!」
「ハーゲン、それは違うよ。ミナミのなかに備わっている力が猫なだけだから」
猫の力とはどういうことだとよく思うが、そういえば昔、猫の埋葬をよくしていたなとミナミはふと過った。今でもたまにするだが、猫に餌をあげたり死別を尊んだり花を手向けたりすることがあるのだ。
オリリオからは「優しい子だね」などと褒められるものである。
「まぁ、そういうわけでミナミが猫人間なのは僕のせいじゃないよ。……ちょっと可愛いけど」
「小さな男の子に可愛いって言われてもな~。そこまでグッと来ないと言うか」
「まぁそう言うなよ坊主。このライラって言う奴はな、俺らを埋葬する前からこの姿なんだよ。なぁ、レイリー?」
「そうだったよな~。俺らの埋葬からもう十数年も経っているのにな」
「……え?」
驚愕する顔を見せるミナミにライラは少し罰が悪そうな表情を浮かべる。三人はしてやったりの反応だ。
ライラが息を吐いてステッキを向けた。
「はいはい、その話はおしまい。それで、変わったことはなかった? 誰かがこの墓地にやって来たとか」
「や、やめてくれよ~。そのステッキで俺たちを除霊しないでくれ! まだ心残りはたくさんあるんだよ」
「シーシャのステッキで除霊されたくないんだったらまずは報告だよ、ハーゲン」
「は……はい」
ハーゲンから揃って三人がライラをおっかない顔で見つめて肩を落とした。そういえば先ほど、この赤い髪の少年は墓守だと告げていた。
墓守は死者と対話をし死を尊び埋葬をし、除霊を行ったりもする。祭司よりも格下だが祭司と同じような役割を果たすと教科書に記載されていた。
ライラが微笑みながら黒いステッキを回す。このステッキで除霊されるのだなとミナミは感じ取った。
「そういえば、見かけない女の子を見たな。赤いドレスを着た」
「あぁ、俺も見たぜ。なんだか悲しそうな顔していたな」
ジョンとレイリーが手を挙げればライラは首を傾けた。「この先を奥に行ったところだ」ハーゲンが話せばライラはにっこりと笑って礼を告げた。
そのまま三人は消えてしまった。
「えっ、消えた!??? じゃあ除霊されたのか?」
「違うよ。別の場所に行ったんだと思う。うーむ、赤いドレスの女の子ね」
また考え込んでからライラに腕を引かれ「君も来て」連行されてしまうミナミであった。
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