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《信じられない》
フードを目深く被り、墓地へと馳せ参じたミナミは井戸の前で息を吐いていた。
「はぁ……はぁっ、もう~、スハラも怖いけどオリリオさんのあの威圧する笑みも怖いんだよ!」
フードを取ってげんなりとするミナミではあるが、まずはカンバラを探しに行こうと試みた。だが意外に探してみても居ない。
「どこだろう~? やっぱり違うのかな」
奥へと行き大きな巨木のある丘に着いてしまった。なんなく全体が見渡せるような気がしてそこへ歩く。
葉が緑にかげっていた。
「よぉ、猫人間! 誰か探してんのか~?」
「あ、ジョンさんじゃん! それにレイリーさんにハーゲンさんも!」
「うぃ~すっ!」
なんと巨木には仲良し三人衆が酒盛をしていたのだ。驚いている様子のミナミではあるが「ライラが居る場所知らない?」問いかけた。
するとハーゲンが口をへの字にする。
「あぁ、なんか知らねぇおっさんと言い争っていたな。祭司の服を着ていたから覚えているぜ」
今度はミナミが口を曲げた。どういうことだと長考する前に「どこに居るの?」また尋ねれば「洋館のほうだ」レイリーが答えてくれた。
三人に礼を告げて洋館の方へ赴く。なんとなく胸騒ぎがした。
「多分、カンバラ様だよな。俺の呪いを解くとはいえ、――どうしてライラへ会いに?」
疑念が募るなか黒い洋館へと向かえば、いきなり轟音が聞こえた。ゴォォン! 音と共に現れたのはカンバラと黒いステッキを携えたライラの姿であった。
「ライラ! それにカンバラ様!」
「来ては駄目だ!」
「えっ……」
黒いステッキを持った状態で札を手にするライラへカンバラが怒りを込める。
「どうして私の言うことを聞かないのかね。ミナミくんの猫化を解けと言っているだけじゃないか」
静かに怒るカンバラにミナミは逃げ出したくなるが堪える。それと同時にライラが「契約違反だ」謎の言葉を告げたのだ。
「あなたは僕に秘密を握られたからって僕を呪って子どもの姿のままにした。ミナミはあなたが一生生きる代わりに精霊として生かせるための道具に過ぎない」
信じられないと言う様子でカンバラを見た。カンバラは悔しそうな表情を見せている。
ライラはステッキを振った。
「あなたは十分生きたはずだ。大祭司にもなったし、もう悔いはないはずだ」
「……ぐぅ。だったら、こうしてやる!!!!」
するとカンバラは怪物の姿に変貌を遂げた。驚愕するミナミにライラは札を用いて突進をする。
するとミナミも負けぬようにライラの姿を追う。
「どうして君が僕を追うの?」
「だって、――真実を知りたいから!」
二手に分かれて二人はニヒルに微笑み、怪物の姿になってしまったカンバラを除霊する手はずを行うのだ。
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