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「俺のお願いを聞いて、俺の家の自宅警備員になってくれたら、借金もそちらの仕事の給料から天引きする事で返してあげるし、住む家にも困らないよ。俺は一日中俺の家を守ってくれる人を求めているから、この仕事をするとなった暁には俺の家にも住んでもらうからね。今の家の家賃はどうせ払えないんだし、それも悪くないだろう?」
男性は若干早口気味ではあるが、冷静に諭すように私に言った。
私は話についていけているようなそうでもないような、という感じだったが、男性の勢いに呑み込まれ、ついこんな事を口走ってしまった。
「雇用条件などが書いてある求人票があれば、見せてください。それ次第で考えます」
いや考えます、じゃないってば、私!
しかし、いくら意味が分からない話だったとしても、私はこのままいけば借金を返せるという誘惑に勝てそうになかった。
「求人票……確かに仕事として正式に雇うなら、雇用条件はきちんと示さないといけないね。借金取りさん、今からそれのデータを作るけど、まだ待てそう?」
「それでこの女がちゃんとお金を返せるんなら、次の仕事までの間だったら待ちまっせ。こっちは金さえ返してくれりゃあ、それでいいんでね」
「……自分でほしいっていっておいてなんですけど、そんな急に作れるもんなんですかね……?」
「ちょっと待って。集中するから」
彼は四角いビジネスバックからタブレットの形に折りたためるPCらしきものを取り出すと、光速で操作を始めた。
立ったまま、求人票を即席で作ってるの!? すごい事務処理能力だな、おい!
「今、話しかけちゃ駄目だぞ。借金踏み倒し女、これでも飲んで待ってろ、走って疲れただろ」
そういって借金取りは紙パックの紅茶をくれた。
……え、何か怪しいものとか入ってないよね、これ。
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