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「君の覚悟が決まったのなら良かったよ。修正も終わったし、後で契約書にサインしてもらえるかい?」
「契約書とかあるんだ……まぁ雇用って形なら当たり前ですね」
クビを切られた例の会社に入社した時にも雇用契約書にサインした事を思い出す。
会社に勤めるのと今回のように人一人に個人的に雇われるのでは勝手が違うだろうが、この男性はそういうのをきっちりやりたい人なのだろう。たぶん。
男性からタブレットが渡される。
「休日の欄を加えておいたよ。週休二日で、シフト制だ。月初めに申請して、自分の好きな日に休むといい。ただし、どうしても出勤してほしい日や、出張を頼む日などは絶対に出てもらう。それでいいね?」
「自宅警備員に出張って何だよって話ですけど、分かりました。多分、そこはあなたにとっては譲れない所なんでしょうし」
「随分物分かりがいいね。まぁ俺の言う事に反抗しても、そんな事は無駄だと分からせるだけだけど」
「え、唐突にドSキャラのシチュエーションボイスCDに出てきそうな発言をするのはやめてもらえません……?」
男性の発言に「現実にこういう事言っちゃう人っているんだ……」とドン引きしつつ、私は渡されたタブレットを確認した。
確かに休日の欄がちゃんと増えてる。なんて仕事が早いの。
本当に事務処理能力高いな、この人。一体、どんな仕事をしてたらこんなに書類作業が早く出来るようになるんだ。
「話がまとまったようで。こちらとしてもお金を適切に返してもらえて嬉しいぜ。例え借金踏み倒し女の未来に暗雲が立ち込めていたとしてもな」
一言余計な事を言うのはやめろと口を挟みたい所だが、借金取りの話したい本題はこの後のようだった。
「ところで、イケメンさん。借金返済はなるべくなら早い方が助かるんだが。具体的には借金踏み倒し女の給与が振り込まれる前に前払いしてほしい」
男性は借金取りの言葉にあっさりとうなずいた。
「別にいいよ、何なら今すぐ払ってもいい」
そういって、男性はクレジットカードらしきものを取り出した。
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