世界で一番お姫様

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 しかし、死ぬ事以外はかすり傷とはよく言ったもので、私も徐々にそんな心の傷から回復していったのである。  その過程で、私は自分で思っていたよりも図々しく、神経が太かったらしいという事もはっきり分かった。  私はNPO法人でお世話になりながら、紆余曲折を経て、最終的に何とか短大も卒業し、企業勤めをしながら一人暮らしが出来るまでに持ち直せた。  この国ではαが企業で良い仕事を持っていき、Ωがヒートなど彼らの生きづらさの原因になってる特性に対する合理的配慮の名のもとに、優先的にホワイトで働きやすい就職先を回されるから、βが就活するのは大変だ。短大卒なら特に。  なので就職先は絵に描いたような零細企業で決して恵まれた所ではなかったけど、それでも自分一人の力で生活していけるぐらいのお金は稼げていたのだがら御の字だった。  昔は私を愛してくれた『彼』に未練たらたらだったが、今では『彼』を解放できた、『彼』が運命の番と結ばれる邪魔にならずに済んだとまで思えている。  ……ただ、彼の事は無理に忘れようと頑張っていた為か、もう顔も名前も思い出せなくなってしまった。それは非常に寂しく切なく感じるけど、どうにか仕方ない事だと納得しようと努力している。    私は私なりに、色々なものを失いながらも、頑張って生きてきた。  だから、このまま前に進み続ければ、私も自分なりの幸せを掴みつつ生きていける、そう思っていたのに。   「……どうしてこうなった……!?」  何と勤め先が買収され私はクビになってしまったのだ。  そんな絵に描いたような不幸ってある!? と思ったが、いくら嘆いても現実は変わってはくれなかった。  ……やっぱり零細企業に就職したのは良くなかったか……! などと、今さら思っても無駄である。  これでは今月のアパートの家賃すら払えない。  人生終了のお知らせである。どうすればいいんだ、こんなの。
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