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「……何ですか、これ……? 会社のプレゼン?」
プロジェクト・セ○ム(私は怖いから伏せ字で呼ぶ)ってどういうことやねんという感じだが、資料の作られ方が企業の新サービス発表会みたいなそれだった。
これは私に対する取り引きらしいが、デザインのレイアウトといい、まさにビジネスみが強い。取り引きといっても、何かもっと違う感じを想像していた。
「…………??」
男性は不思議そうに小首を傾げる。どうやらあまりピンと来ていないらしい。天然かよ。
そして、仕草が可愛くて、若干あざといのは何なんだ。そういうのやめてほしい。
「それは俺の家で雇いたいと思っていた自宅警備員の求人に対する説明資料だけど、何か変な所でもあったかい?」
自宅警備員……自宅、警備員……じたく、じた……。
一瞬、脳が理解する事を拒否した。
それはつまり。
俗に言う、無職、ニート、仕事をしない人って意味!?
「え、お金をわざわざ払って赤の他人を自宅でニートさせるんですか!? 意味が分からないです!?」
「イケメンさん、悪趣味だとは思ってたけど、まさかここまでとは……」
男性は私と借金取りからの呆れと驚きの視線を受けても涼しい顔をしていた。
「違うよ、俺の雇いたいのは仕事をしない穀潰しじゃない。……俺の家を犯罪から守ってくれる、セ○ムだよ」
……肉声で呼ぶときはわざわざセ○ムってちゃんと大人の事情に配慮した呼び方をするんだ……文字で書く時も配慮すればいいのに……。
いや、じゃなくて。それは今、どうでもよくて。
……この人は心の底から求めているというの、正真正銘言葉通り、自宅を警備してくれる人を……?
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