5.心配か、それとも

6/9
前へ
/90ページ
次へ
そんな中、心から一度締め出したはずの違和感が再び顔を出した。 梨都子や清水と会ったのを皮切りに、私はまた友人たちと約束を取り付けるようになっていたが、その予定を告げると太田は不機嫌になった。最終的に渋々と頷きはするが、集まる顔ぶれや場所、帰宅予定時間、そしてその場に男性はいるのかどうかなどを確かめるように執拗に聞いてくる。そして都合がつく限り、私の送迎をすると言い出すのだ。 また、太田は密に早く連絡を取りたいタイプのようだった。何かの理由で電話やメッセージにすぐに応えられない時には、私が応じるまで何度も連絡をよこす。携帯の履歴に彼の名前がずらりと並んでいるのを見た時には、付き合い始めたばかりの頃にも同じようなことがあったと思い出し、背筋にひやりとしたものを感じて胸がざわついた。 それでもまだ私は、それらは太田の私への愛ゆえだと理解し、飲み込もうとしていた。自分の中に生まれていた疑念を抑え込み、胸の奥に押し込めていた。けれどあの日それは確信に変わり、その出来事をきっかけに、付き合ってまだ数か月にしかならないのに、早くも太田と別れたいと思うようになっていた。 その日、私は大学時代からの友人たちと会う約束をしていた。 そのことを告げた時、案の定太田の機嫌が悪くなった。この頃になると、同性異性に関わらず、私が友人たちと会うことを嫌がるような言動が以前よりも増えていて、彼と付き合うことに窮屈さを感じるようになっていた。 『自分の約束だから自分で行く』 そう言う私に、太田は心配だから送り迎えをすると言ってきかなかった。結局折れた私は今、ムスッと苦い顔をして運転する太田の車の助手席に、いたたまれない気持ちで乗っている。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

281人が本棚に入れています
本棚に追加