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「味覚もちゃんと大人になったみたい」
私もまた普段使いの言葉で返し、ふふっと笑って拓真を見返す。
何を思い出したのか、彼はからかうように言った。
「カレーも中辛くらいは食べられるようになった?」
学生時代のことをいっているとすぐに分かり、私は苦笑する。
「うん、大丈夫になったよ。それにしてもよく覚えてるね」
「だって、碧ちゃんのことだからね」
拓真は当然とでもいうような顔をした。
得意げにも見えるその表情が可笑しくも嬉しい。
「お昼は向こうに着いたら食べようか。その後支社に向かえばちょうど良さそうだ」
「そうね」
「荷物貸して。重いだろ?」
「これくらい大丈夫よ」
そう答えたにも関わらず、彼は私の手から旅行カバンを取り上げてしまう。
「あっ、大丈夫だから!」
「これくらいは甘えて。それに、俺がこうしたいんだ」
彼はにっと笑った。
「……じゃあ、お願いします。ありがとう」
もじもじと礼を言う私を、拓真は満足そうに見た。
たったそれだけのことだったが、彼から大切に扱ってもらっていると思うと頬が緩みそうになる。その表情を隠すために、私は線路の向こうに目をやった。
「新幹線、そろそろ来る頃かしら」
「そうだね」
そんな言葉を交わしていると、間もなくして曲線美の綺麗な車両の姿が見えてきた。
平日だからなのか。ホームで待つ人の姿が少ないと感じていたが、新幹線の中もだいぶすいていた。これならわざわざ指定席を取らなくても良かったんじゃないかと思いながら、私は拓真の後を追う。
私を窓側に座らせ、自分は通路側に座った拓真が、私を気遣うように言った。
「碧ちゃん、眠かったら寝てていいよ。着いたら起こしてあげるから」
「私、そんなに疲れたような顔してる?」
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