13.狂気の色

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「嘘なんて……」 恐ろしさに締まりそうになる喉から、私は声を絞り出した。しかし太田の一言に表情が固まる。 「北川と会ってたんじゃないのか」 「あ……」 それは単に鎌をかけられただけだったのかもしれない。それなのに私は反応してしまった。慌てて顔を背け、口を閉じた時には遅かった。その動揺は、それが事実だったことを太田に悟らせてしまった。 彼は片手で私の両の手首をつかんで壁際に押さえつけ、肩を押さえて噛みつくように口づけた。 「んっ……」 激しい口づけに呼吸すらままならなかった。さらには脚の間に膝を入れられて、私の動きは封じられた。 彼の唇が離れたすきに逃げようとしたが、太田は私の両手をつかんだまま、もう一方の手で私のスカートをまくりあげた。 「いやっ!」 私は必死に抵抗した。 太田はちっと舌打ちすると、私の体を乱暴に抱き上げて寝室に向かった。そのまま放るようにベッドに押し倒されて、私は声を上げた。 「お願い、話があるの。聞いてっ!」 「嫌だ。聞きたくない」 太田は即座にそう言うと、いつの間にか外していたネクタイで、私の両手首を頭上に縛りあげた。 「やめてっ!」 「やめないよ。笹本が何度言っても分かってくれないのが悪いんだ。お仕置きしないとね」 太田の目は狂暴な色を帯びていた。 手首のネクタイをなんとかして外そうとするが、動かす度に手首に食い込む。 「太田さん、お願い。話を聞いてください」 できるだけ冷静にと思うが、異常にも見える太田の様子に声の震えが止まらない。
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