13.狂気の色

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「あの後帰ってから、ちゃんと寝たのか?目が赤いようだし、なんだか瞼も少し腫れているような気がするんだけど……」 私は慌てて顔を伏せて、なんとかひねり出した理由を口にする。 「えぇと、これは、あれだと思う。寝る前にお水をたくさん飲んじゃったからなのと、ちょっと動画とか見ちゃって、たぶんそれで……」 拓真は疑わしそうに、しかし心配そうな顔を見せる。 「本当にそうならいいんだけど……。何かあったら、いつでも俺に話してくれよ。絶対に力になるからね」 何かを察しているのだろうかと、拓真の言葉にどきりとした。しかし彼に心配をかけるわけにはいかないと、私は明るい表情を作った。 「ありがとう。その時はそうさせてもらうね。とりあえず、出張の日はよろしくね」 私の笑顔を拓真はしばらく疑わしそうな目で見ていたが、諦めたようにふっとため息をついた。 「今の状態では、甘えてはもらえないのかな」 「え……?」 「いや。碧ちゃんにとっての俺はまだ彼氏じゃない。ただの同僚でしかないから、甘えていいよって言っても、君は甘えてはくれないんだろうなって思ってさ。分かってはいても、ちょっと寂しいな」 そんな風に優しい声で言われたら、今すぐすべてを打ち明けて彼に縋りつきたくなってしまう。でも、それはできない。気持ちはすでに拓真にあるとは言え、また、そのことを彼も知ってはいるけれど、私は本当の意味での彼の彼女というわけではない。だから甘えたい気持ちにブレーキをかけて、拓真に言葉を返すことはしないまま、ただ微笑んだ。 「そろそろ戻りましょ」 私は彼を促して会議室を出て、オフィスに足を向けた。
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