13.狂気の色

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この機会を逃したら、また別れるきっかけを失ってしまう。そう思った私は彼を引き止めてしまった。 「待って!分かりました。話を聞いて下さい」 こうして、テーブルを挟んで太田に向き合って座り、私は別れたいと話を切り出した。 けれど、やはり話にならなかった。太田は別れないの一点張りで、話は堂々巡りだった。そのうちに痺れを切らしたように彼は私を押し倒し、どうしてこれほどまでにと思うほど、昨夜以上に執拗に私を抱いた。やめてと訴える私の言葉に耳を貸さず、彼は私の自由を奪い、噛みつくような口づけで私の体中に新たなあざを残した。 この状況は予想がついたはずだった。しかし、この機会を逃したら、と焦ってしまった。これはその結果なのだと、私は声を押し殺しながら心の底から後悔していた。 太田が帰り支度を始めた。 私は所々痛む体を起こし、彼の背中に向かって、勇気を振り絞りながら再び告げた。 「もう今日限り、あなたとこんなふうに個人的には会わない。別れる」 太田はゆっくりと振り向いた。 「その話、まだ終わってなかったのか」 彼は私の頬に手を伸ばし、指先でそっと撫でながら甘い声で言う。 「どうしてそんなこと言うんだよ。俺は笹本を愛してる。お前だってそうだろ?愛し合ってる俺たちが別れる理由はどこにあるんだ」 「理由?私はもうあなたを愛していない。あなたの束縛が嫌。こんな暴力的な愛し方も嫌。もう耐えられない」 「束縛?それはお前が大切だからだ。それに暴力的だというけど、笹本はいつもそれでも達してるじゃないか。気持ちいいからだろ」 「違う。心から気持ちいいだなんて思ったことはない。愛されているとも思えなかった」 「なんだよ、それ」 太田の声が低くなり、私はびくりと肩を震わせた。
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