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「俺にはそう見えるよ。夕べもよく眠れなかったのかな、って」
「そう……」
私は足の上で組んだ両手に目を落とした。
「……太田さんと何かあった?」
優しい声で訊ねられて、どきりとした。甘えちゃいけない、彼を太田との別れ話に巻き込まないようにと思っていた。そのはずだったのに、明らかにそうと取れるような言葉をもらしてしまった。
「うん、そんな感じ……」
拓真の手がそっと私の手の上に重ねられた。
「もしかして、別れ話のことで?」
「……うん」
拓真の手が私の手をキュッと握った。
「もしも一人じゃどうしようもないのなら、いつでも言って。頼ってくれていいんだよ」
彼の言葉に涙がこみ上げてきそうになったが、堪える。
「ありがとう。なかなかうまくいかなくて、弱気になっちゃった。ごめんね」
「どうして謝るの?この前言ったように、俺は君にどんどん甘えてほしいと思ってるんだから、俺にはなんでも吐き出して。だけど今は……」
拓真は言葉を切って、私の顔をのぞき込む。
「どうしたの?」
鼻声で先を促す私に、彼は照れ臭そうに言う。
「俺が碧ちゃんに甘えたい気分なんだけど、いいかな」
「甘えたいって、何?」
拓真の言葉の意味に気を取られたら、重くなりかけた気持ちを一瞬忘れた。
彼はにやりと笑う。
「さっき買ったチョコ、俺にも一つちょうだい」
「チョコ?いいけど……。拓真君って、チョコとかダメじゃなかった?」
ガサゴソとバッグの中を探りながら訊ねた。学生時代の拓真はチョコだけではなく、甘いもの全般が苦手だったはずだ。
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