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私はふるふると首を横に振る。
「そ、そんな訳にはいかないよ。いくらなんでもそこまでは甘えられない」
「俺は全然構わないよ。むしろ、俺の目の届く所にいてほしいんだ。その方が安心できる」
拓真の真っすぐな視線に耐えられずに、私は目を逸らしかけた。しかし、彼はそれを許さなかった。指で私のあごを捉える。
「碧ちゃん、待っていた答えを今、聞かせてほしい。もう一度、俺の彼女になって」
私の目を覗き込む拓真の顔が至近距離に迫り、鼓動が跳ね上がった。ドキドキして息が止まりそうになる。
「返事は?」
重ねて問われて、私はついに観念した。
「はい……」
拓真はほっとしたように笑い、私の顎から指を離したが、急にがくっとうな垂れた。
「ど、どうしたの……?」
驚いている私に、拓真は恥ずかしそうな笑みを見せた。
「いや。『うん』って言ってもらえて、安心しすぎて緊張が解けた。あれからやっぱり気が変わったって言われたら、どうしようかと思ったからさ」
「そんなわけないのに……」
私は思わずくすくすっと笑い声をもらした。
拓真の顔に笑みが浮かぶ。
「この部屋に来てから、やっと普通に笑ったね」
「え?そうだったかしら」
私は自分の頬に触れる。
「そうだよ。俺、碧ちゃんの笑った顔、好きだよ」
「それは、ありがとう……」
拓真の飾り気のない言葉と眼差しに照れてしまう。でも嬉しい。
「さてと、話は戻るけど」
拓真は悪戯めいた顔つきで私を見た。
「俺の部屋においで。だって彼女なんだから、遠慮はいらないよ?」
しかし私は首を横に振った。
「そうは言っても、いきなりそんな訳にはいかないわよ。だからいったん知り合いにお願いしてみようと思うの」
拓真は大きなため息をつくと、諦め顔を見せた。
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