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「パジャマ、可愛いの着てるね」
私を部屋に招き入れながら、拓真はまぶし気に目を細めた。
私は熱くなる頬を手のひらで覆う。
「恥ずかしいからあんまり見ないで」
「分かった分かった。できるだけ見ないようにする」
拓真は愉快そうに笑ってベッドに足を向け、私を呼んだ。
「おいで」
「う、うん。それじゃあ、失礼します……」
私はカーディガンを脱いで椅子の背にかけた。どきどきしながら、拓真がめくり上げた掛布団の中に足を入れて体を横にする。
「電気、消すよ」
足元の灯りだけを残して部屋の照明を落とし、拓真は私の隣に体を横たえた。
「おやすみ」
穏やかな声でそう言って、彼は私の髪をそっと撫でた。何度も何度も私の頭を撫でた。何もしないと言った通り、拓真はそれ以上は私に触れようとしなかった。
この二人きりの夜に、何も期待しなかったと言えば嘘になる。だからこそ緊張してどきどきしていたのだが、頭を撫でられているうちにその鼓動も落ち着いていった。
本当に何もしないんだね――。
ほんのちょっぴり残念に思いながらも、拓真の真面目さが嬉しくて、私は小さく笑みを刻む。
私の様子を見守っていたのか、気遣うような彼の声が頭の上で聞こえた。
「眠れない?」
「大丈夫」
私は慌てて彼に背を向けた。
「おやすみ。ありがとう」
「ん。今度こそ、おやすみ」
髪に拓真の息遣いを感じながら、私は目を閉じた。背中に感じる彼の温もりが心地いい。こんなに温かい安心感を覚えたのはいつぶりだろうと考えているうちに、睡魔が訪れたようだ。次第に瞼が重くなり始め、いつの間にか私は眠りに引き込まれていた。
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