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私は少し考えてから答えた。
「梨都子さんが来てからにします」
「そう?じゃあさ、今日出す予定のデザートがあるんだけど、先に食べてみる?」
「デザート?今月は何にしたんですか?」
「今月はね、シンプルにプリンにしました」
「食べたいです!」
「今出すね」
ワクワクしながら待っていると、ホイップクリームとフルーツを添えたプリンが目の前に現れた。
「わっ、美味しそう。いただきます!」
私は早速スプーンを手に取り、プリンをそっとすくい取って口の中に入れた。
「んんっ!懐かしいような味。美味しいです。池上さんのデザート、外れなしですよね。もしかして、お菓子屋さんもやれたんじゃないんですか?」
「さぁ、どうだろね。俺にはこっちの方が性に合ってるみたいだよ」
池上はあはは、と笑う。
「なんにしても、料理できる旦那さんっていいですよねぇ。そうやって、梨都子さんの胃袋をつかんだわけですね?」
にやにや笑いながらそんなことを言った時、不意に私の背後に誰かが立った。
「そうなのよ。つかまれちゃったのよね」
その声に振り向くと、いつ来るかと待っていた梨都子が、悪戯っぽい顔をして私を見下ろしていた。
「もうっ、びっくりした。気配を殺すのはやめてくださいってば」
「あはは、ごめんね。二人して楽しそうに喋ってたから、邪魔したら悪いかなと思ってさ」
「なんですか、それ。私、梨都子さんが来るって聞いて、今か今かと待っていたんですからね」
苦笑する私に笑顔を見せながら、梨都子は隣の席に腰を下ろした。
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