10.野生的な彼と、彼の元カノ ※

7/13
前へ
/104ページ
次へ
 ひとまず何とかなりそうで、私含め、道重さんと大石さんも『良かった〜』と安堵の表情に変わる。   「そうだ、差し入れ持ってきたから。お茶と一緒にカメラマンさんとかに出してあげて」 「すみません、何から何まで……ありがとうございます」  日頃、部下から『鬼上司』と言われているアキくんも、こういった細やかな気遣いは忘れない。道重さんはニヤニヤとしながら、こっそり私に耳打ちしてきた。 「宝来部長とはいえ、ここまでするのは珍しいよ〜? これは相当、濱本さんに目をかけてるね!」 「そんな! 初めての撮影対応で、頼りないからですかね……現にやらかしちゃってますし」 「ううん、あれは前日に連絡してこなかった事務所側が悪いわよ。日曜とはいえ、緊急の場合は連絡しないとね。ほら、一緒にお茶とお菓子配っちゃいましょう?」 「はい、ありがとうございます」  モデルさんを待つ間、お菓子とお茶で和やかな雰囲気になる。モデルさんが来ないかもしれない……となった時、皆んな口では『大丈夫だよ』と言いつつ、少しピリッとした空気になっていた。 (さすがアキくんだ……)  鬼上司の出現で別の緊張感はありつつも、『宝来さんがいるなら大丈夫』という絶対的な安心感が感じ取れた。 「モデルさん、到着しましたー!」  入口近くに立っていたスタッフが、大きな声で知らせてくれる。  どんな外国人モデルさんだろう、と思い視線を上げると、スタジオ内がどよめいた。そこにはモデルとして有名な、片桐アイ(かたぎり・あい)が立っていたからだ。 「うわっ 片桐アイじゃん! 俺、初めて見た」 「何でアイがここにいるの? え、まさか代打のモデルって……」 (代打で来るようなレベルの人じゃない……なんで……)    アイさんがアキくんを見つけた途端、大きな声を出した。   「暁斗! 社長からピンチって聞いて、駆けつけちゃった! 久しぶり〜!」 「アイ……」
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1696人が本棚に入れています
本棚に追加