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ひとまず何とかなりそうで、私含め、道重さんと大石さんも『良かった〜』と安堵の表情に変わる。
「そうだ、差し入れ持ってきたから。お茶と一緒にカメラマンさんとかに出してあげて」
「すみません、何から何まで……ありがとうございます」
日頃、部下から『鬼上司』と言われているアキくんも、こういった細やかな気遣いは忘れない。道重さんはニヤニヤとしながら、こっそり私に耳打ちしてきた。
「宝来部長とはいえ、ここまでするのは珍しいよ〜? これは相当、濱本さんに目をかけてるね!」
「そんな! 初めての撮影対応で、頼りないからですかね……現にやらかしちゃってますし」
「ううん、あれは前日に連絡してこなかった事務所側が悪いわよ。日曜とはいえ、緊急の場合は連絡しないとね。ほら、一緒にお茶とお菓子配っちゃいましょう?」
「はい、ありがとうございます」
モデルさんを待つ間、お菓子とお茶で和やかな雰囲気になる。モデルさんが来ないかもしれない……となった時、皆んな口では『大丈夫だよ』と言いつつ、少しピリッとした空気になっていた。
(さすがアキくんだ……)
鬼上司の出現で別の緊張感はありつつも、『宝来さんがいるなら大丈夫』という絶対的な安心感が感じ取れた。
「モデルさん、到着しましたー!」
入口近くに立っていたスタッフが、大きな声で知らせてくれる。
どんな外国人モデルさんだろう、と思い視線を上げると、スタジオ内がどよめいた。そこにはモデルとして有名な、片桐アイ(かたぎり・あい)が立っていたからだ。
「うわっ 片桐アイじゃん! 俺、初めて見た」
「何でアイがここにいるの? え、まさか代打のモデルって……」
(代打で来るようなレベルの人じゃない……なんで……)
アイさんがアキくんを見つけた途端、大きな声を出した。
「暁斗! 社長からピンチって聞いて、駆けつけちゃった! 久しぶり〜!」
「アイ……」
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