違和感だらけの家

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自慢になるが俺の妻は最高だ。 容姿端麗で人を笑かすのが何よりも上手い。 俺の事は元より、生きとし生けるもの全てを愛す度量を持っている。 少しオーバーに言い過ぎたが、まさに自慢の女房だ。 本音を言えば出張なんて行きなくなかった。 ずっとずっと妻と居たかった。 だが、以前から行くことは決まっていたし、3ヶ月なんてあっという間だ。 そう自分に言い聞かせ、妻も快く俺を送り出してくれた。 それでも3ヶ月も寂しい思いをさせたのだ。 当分はうんと甘やかしてあげよう。 まだ新婚旅行にも連れてってあげられていないから、有給を使ってどこか遠くへ行こう。 愛猫の文吉にもうんと甘やかしてあげよう。 俺の事を忘れてないといいが……… それにしても早く会いたい。 ちゃんと安全運転してくれてるタクシーの運転手さんには申し訳ないが、もう少しスピードを上げて欲しい。 今夜は俺の好きな豆腐ハンバーグ。 妻の作る豆腐ハンバーグは絶品だ。 俺の頭の中は早く会える家族の事でいっぱいになっていると、遂に俺の住むマンションへと辿り着いた。 久しぶりの我が家に俺はドアの前で佇んでいた。 ああ、心臓がドキドキする。 久しぶりに会う妻の反応が正直、怖い。 笑って出迎えてくれるだろうか。 全てはドアを開ければ分かる。 俺は覚悟を決めてドアを開けた。 「ただいま」
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