違和感だらけの家

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リビングに入ってもなお、この違和感を拭い去る事ができないでいた。 寧ろ、このリビングも違和感だらけで更に謎が増えた。 俺は10秒の間だけリビングの前で突っ立ち、辺りを見回してみた。 ぱっと見た感じ、ただのリビングだ。 模様替えした形跡もなく、テレビも家具も出張前と同じ位置だ。 3ヶ月前と何も変わらない。 ただ違うのは机の上に置かれた花瓶のみ。 「なぁ、この花は?」 俺はすぐにキッチンにいる妻に聞いた。 妻はボールに豆腐を潰して、そこにパン粉を加えて混ぜていた。 「お隣の人から貰った。捨てるのもったいないから一応飾ってみたの。イースターリリーって言うんだって」 「そうか……」 違和感の正体はこれか。 いや、まだある。 ――分かった。 文吉だ。 いつも文吉の立ち位置はソファかキャットタワーのてっぺんだ。 でもその箇所に文吉はいない。 「文吉は?」 俺は再び妻に尋ねた。 「寝室にいるよ。クローゼットの前で動かない」 どうやらこの3ヶ月の間に文吉の立ち位置が変わったみたいだ。 違和感の正体が掴め、俺は少しだけ安堵した。 しかしこの違和感……… 拭い去った訳ではなかった。
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