33人が本棚に入れています
本棚に追加
リビングに入ってもなお、この違和感を拭い去る事ができないでいた。
寧ろ、このリビングも違和感だらけで更に謎が増えた。
俺は10秒の間だけリビングの前で突っ立ち、辺りを見回してみた。
ぱっと見た感じ、ただのリビングだ。
模様替えした形跡もなく、テレビも家具も出張前と同じ位置だ。
3ヶ月前と何も変わらない。
ただ違うのは机の上に置かれた花瓶のみ。
「なぁ、この花は?」
俺はすぐにキッチンにいる妻に聞いた。
妻はボールに豆腐を潰して、そこにパン粉を加えて混ぜていた。
「お隣の人から貰った。捨てるのもったいないから一応飾ってみたの。イースターリリーって言うんだって」
「そうか……」
違和感の正体はこれか。
いや、まだある。
――分かった。
文吉だ。
いつも文吉の立ち位置はソファかキャットタワーのてっぺんだ。
でもその箇所に文吉はいない。
「文吉は?」
俺は再び妻に尋ねた。
「寝室にいるよ。クローゼットの前で動かない」
どうやらこの3ヶ月の間に文吉の立ち位置が変わったみたいだ。
違和感の正体が掴め、俺は少しだけ安堵した。
しかしこの違和感………
完全に拭い去った訳ではなかった。
最初のコメントを投稿しよう!