33人が本棚に入れています
本棚に追加
「文ちゃん、ただいまぁ」
俺は猫なで声を出しながら寝室へと入った。
「にゃー」
妻の言う通り、文吉はクローゼットの前に陣取っていた。
香箱座りで俺をじっと見つめている。
可愛い姿に癒される。
癒されるが………
――やっぱりだ。
ここにも違和感を感じる。
だがそれが何なのか分からない。
文吉の様子も至って普通だ。
ただお座りをして俺の方をじっと見つめている。
すると、文吉は立ち上がってクローゼットをカリカリと引っかいていた。
――まさかっ!
文吉の行動を見た瞬間、違和感の正体が見えてきた。
そして背後から潜む殺気も………
俺は間髪入れずに後ろ蹴りをした。
「うっ!」
俺の蹴りは妻のお腹に直撃した。
その右手には包丁が握りしめられていた。
突然の蹴りに妻は後ずさりとなり、最後には転んだ。
――ドンッ!
妻の後頭部は床に直撃し、そのまま意識を失ってしまった。
その隙に俺はすぐに妻から包丁を奪い取った。
そして踵を返して寝室へと戻り、クローゼットを開けた。
クローゼットの中には縄で縛られ口も塞がれた妻がいた。
最初のコメントを投稿しよう!