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留置担当官に連れられてやって来た女は何も話そうとはしなかった。
それでもその姿は妻に瓜二つ。
だが、彼女から放たれる殺気は尋常ではない程、俺に向けられていた。
「気分はどうかな?」
俺は世間話がてら体調管理を尋ねた。
だが、女は何も答えない。
「黙秘か………まぁいい。罪状は不法侵入に殺人未遂。妻を長い間、クローゼットに閉じ込めたから監禁罪も付け加えると……当分は外には出られないな」
俺は怒りを込めて女に言った。
それでも女は黙秘を貫いた。
「動機はやはり俺への恨みか?」
この問いにも黙秘したが眼の瞳孔が開いたのを見逃さなかった。
この女はかつて俺が起訴した。
当時女は19歳で大学生を装い、美人局をしていた。
女は相棒の男に脅されたと供述したが、実際は恋人同士で一緒に男を騙しては金を巻き上げていた。
だがその日々もすぐに終わりを告げ、2人は呆気なく捕まった。
俺は2人を問答無用で起訴したのだ。
裁判では有罪となり男は懲役10年(暴行罪も含む)、女には懲役5年の刑が言い渡された。
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