山を選んだばっかりに

10/10
前へ
/10ページ
次へ
 腕の力が緩くなった。  やだ、離れたくない。 「そんな、泣きそうな顔するなって。勘違いなんかじゃないって、ちゃんと教えてやるから」  誰も聞いてないのに、内緒話のような小さい声。  彼の顔が近付いてきて、幸せと切なさの中間のような笑みを見せた。  唇が触れ合って、私は目を閉じた。  自惚れでもなく、勘違いでもない。  時間が止まったような山の中で動き出した、私たちの恋。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加