山を選んだばっかりに

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「悩みぐらい、私だってあるよ」  唇を尖らせて、子供の頃のような口調になってしまう。  私が赤ちゃんの時を知ってる従兄の前では、自然とこうなる。  大きくなったらもっと近付けると信じていたのに、十歳の年の差が変わるわけもなく。 「俺が聞いていいなら、聞くけど?」  テーブルに置かれた、青いプラスチックのコップ。  コーヒーはあと一センチ。 「聞いていいっていうか……ほかの人には言えないし」 「俺は?」 「……何で距離詰めて来てるの」 「この方がよく聞こえるかと思って」
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