2

2/2
前へ
/4ページ
次へ
「ただいま」 「おかえり」  お父さんが帰ってきて、僕らは一緒にご飯を作った。不器用だけど、一生懸命作ってくれる野菜炒めと卵スープ。白いご飯とお漬物も一緒に炬燵に並べて、いただきますをする。だいぶ温かくなって雪も降らなくなったから、炬燵ももうすぐ終わりになる。  僕が一日だけ入院してから、お父さんはまたお酒を飲まなくなった。通りかかった人に道端で倒れていたのを発見されて、救急車で運ばれたのを僕はちっとも覚えていない。夜の散歩をお医者さんにも看護師さんにもたくさん叱られた。病院に来たお父さんは僕を抱きしめて、よかったよかったと声をあげて泣いていた。  お母さんはもう帰ってこない。それがやっと分かったんだと、照れくさそうに言うお父さんと、僕は一緒に頑張ろうって指切りした。二人がきっちりお別れしたのは寂しかったけど、僕にはもう僕がいる。お父さんもいる。怖いものなんてなんにもない。 「ほら、気をつけないと湯冷めするぞ」  お風呂から出ると、お父さんがココアを入れてくれた。受け取ったマグカップの中で、白いミルクがくるくると渦を巻いている。飲むのがもったいないぐらい綺麗で、炬燵でそれをじっと観察していると、お父さんは冷めるぞと笑った。  温かくて甘いココアは、雪兎と同じ味だった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加