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無職で迎えた初日は、目が覚めたらお昼近くになっていた。あくびをしながら冷蔵庫を開けたが食べ物がない。コンビニでも行くかと着替えて、トートバッグの中を見て「あっ」と漏らした。ソファの上で逆さまにして中身を全部出すと、財布がなかった。買い物はスマホで出来るが、財布にクレジットカードや現金が入っている。
昨日駅前で転んだときかとハッとして、トートバッグを引っかけるや、慌てて駅に向かった。
「お財布届いてますよ」
窓口の駅員に健康保険証で本人証明をして、無事に財布を受け取った。でも、お札が綺麗になくなっていた。小銭とカードは無事だったが、お札は三万円入れてあった。推しのライブチケット代で、コンビニ払い用のお金だ。
会社を退職した日に自転車に轢かれて、三万円も無くした。薄気味が悪いくらい不運続きだ。正月に家族で集まったときに母から「あなた厄年なんだからお祓いくらい行きなさいよ」と言われたが、そのときは聞き流していた。
萌子は駅前のベンチに腰掛けて、スマホで〈厄年 女〉と検索した。
〈女性の厄年は、数え年で十九歳、三十三歳……特に三十三歳は「大厄」とされており、女性にとって最も注意が必要な年齢です……〉
「三十三歳、もろじゃない……大厄だったの……?」
とりあえず駅近のスーパーでランチと食材を買ってアパートに戻った。
サラダチキンを食べながら、例の冊子に目を通した。
〈フレンズの悩みは天が浄化してくれます〉とある。本当かしらと思いながらも薄い冊子なので最後まで読んだ。
裏表紙に〈浦部福子〉と名前の判子が押してあり、連絡先の電話番号があった。
おばさんの「しばらく気をつけなさい」の言葉どおりになっている……。
束の間迷ったが、聞くだけでもと、思い切って電話をかけた。
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