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 一年後――  萌子は営業事務として正社員で働いていた。公私共に可もなく不可もなく、平凡な毎日だ。でも心は安定していた。  不倫に走ったのも、エタニティにはまったのも、澤村を断れなかったのも、すべては自分の依存心と承認欲求を満たすためで、それを利用されたのだ。そう気づいたとき、心に羽が生えたようにふっと軽くなった。韓流の追っかけもピタッとやめた。一種の依存だと気づいたからだ。依存心や承認欲求を手放したとき、初めて人は自由になれると最近は思っている。  ある日、浦部福子とバッタリ会った。この考えを話したら憑き物がとれたように目を丸くして、しばらくして浦部はエタニティを辞めた。  今や浦部は萌子を「先生」と呼び「先生の教えを広めましょう」と普及に努めている。その後澤村も加わり、仲間が少しづつ増えていた。  こんな私の考えでも誰かの役に立つのなら嬉しい。萌子は、経典をしたためながら微笑んだ。
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