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派遣は初めてのため、昨夜のうちにW E Bで職務経歴書の登録を済ませていた。
今日は派遣会社のスタッフと面談を行い、細かな要望などを伝えて、条件に合う仕事があれば後日連絡をもらう流れだ。
およそ一時間の面談を終えてブースで求人情報を見ていると、面談をしたスタッフが戻ってきた。
「よさそうなお仕事がありました。こちらはいかがですか?」
タブレットに表示された仕事内容は、時給、業務内容、求める経験などがピッタリで、最寄駅は新宿だった。希望条件どおりすぎて驚いた。
「これ、応募したいです」
「わかりました。では先方にレジュメを提示します」
その後、押さえで応募先を二社追加して登録を終えた。
仕事が決まるまでは、早くて一、二週間かかると聞いていたのだが、翌日の午前中に第一希望の会社に書類が通ったと連絡があり、その翌日の午後に派遣先を見学して、その日のうちに仕事が決まった。
帰り際に派遣会社の営業が、目を丸くして言った。
「登録されてから三日で就労が決まるなんて、安藤さん持ってますね」
「いえ……御社のおかげです」と謙遜してみせたが、無意識に左腕の数珠を触っていた。
こんなことってあるのかしら……。このときは半信半疑だったが、さらに幸運が続いた。
推しの韓流グループのライブが、メンバーの体調不良で延期になったのだが、奇跡的に回復して予定通り開催されることになったのだ。萌子は飛び上がって喜び、部屋に貼った御札に手を合わせた。
また、派遣先はとても働きやすく、初めての派遣で不安だったが取り越し苦労だった。
つい二週間前は暗い気持ちで新宿を歩いていたのに、今は霧が晴れたように目の前が明るい。
「エタニティ、すごい……」
萌子はすっかり信じるようになった。
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