エスポワール号の方程式

2/3
前へ
/5ページ
次へ
「あら、レオじゃない。あなたも起こされたってわけね」  ブリッジには先客がいた。エミリーだ。彼女は長い金髪を耳にかけながら言った。 「まあね。それにしても緊急事態ってなんだろう? まだ目的地までは三日あるのに」  窓からは目的の惑星が大きく見える。赤茶色の地面にところどころクレーターが見える。 「アルベルト、緊急事態ってなんだい? わざわざコールドスリープから起こしたからには、理由があるんだろう?」 「重大な事案につき、オリバー艦長が到着されるまでお話できません」  目の前に立ったロボットのキンキンした声はそっけなかった。 「私を呼んだかい?」  オリバー艦長が個室のドアから現れる。ドアの高さは長身の彼には少々窮屈なのか、身をかがめていた。 「レオ、エミリー、待たせたね。さて、アルベルト、三人とも揃ったのだ、緊急事態の内容を聞かせてもらえるかい?」 「オリバー艦長、誠に残念ながら地球に残された人類は滅亡しました」 「アルベルト、『人類が滅亡した』という悪い冗談のために我々を起こしたのか」  オリバー艦長がため息をつく。 「いえ、艦長。地球の人類は核戦争のために滅亡しました。食物の奪い合いのために。この宇宙に残された人類はあなたたち三人です」  ブリッジは静まりかえった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加