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「………で、なんですか?僕の執筆した小説のことって」
先ほどの営業ボイスが消えた宇宙。今は、不機嫌さが駄々洩れになっている沈下した声色。
地雷ワードを一瞬で理解した俺は、内心ほくそ笑んだ。
だが。ただいま、今回も俺は被害者なんだ。ーー同情の余地は無い!
前回は、《猿堂×嵐》というBL本を本人に無許可で勝手に執筆したコイツ。
それを、お試しで出版化し売れたらしい。かなりの部数で。
ムカついた俺は、名誉棄損で苦情を入れたら
「猿堂さん、前に嵐と酒飲んで神龍時家を半壊したでしょ。その慰謝料を身体で払って貰っただけですよ、僕は。そんなに言うなら、ほら。証拠の誓約書の内容確認をどうぞ」
と、言われ確認すると…………うん、サインしてあるわ。しかも、酒を飲んでいる状態で書かせやがって!この腹黒がッ!!
まぁ……それは、百歩譲って良いとする。
問題は、ここからだ。あの後、大変だった…………。主に、俺の生命危機が。
BL本の存在を知った丑崎 なつりというプッツンイカれ女。怒りで発狂し、砂人間になって追いかけて来たのだ。
━━━━━ 鉈を持って。
「アンタ如きが、嵐くんを抱くなんてッ!!しかも、私の旦那を汚しやがって………。
私なんて、抱かれたこと無いのに………!どうして、こんな猿なんかが!!
嵐くんの無垢を利用して道を外したアンタなんか、幼馴染でも何でもないわ…………」
と、現実に起きていない小説話のことで、怒涛の刃を向けてきたストーカー。
血の涙を流しながらだ。怖い以外何もない。
急いで、弁解しようと説得しても会話が一方通行。しかも、
「━━━━〈死〉を持って、罪を償え」
と、理不尽なことを言ってくる始末だ。
そこから始まった、地獄のリアルガチ鬼ごっこ。
最初は、派遣先のアメリカへ逃亡しようとしたが。行く先々に、砂化したアイツが居て。逃げて、逃げた、半年間。
ようやく、隙とついて飛行機へ潜り込んで乗ることができた。
話を戻すが、
━━━━━━ 今回も、俺は被害者だ。
しかも、相手が言い逃げができないほどにだ。
だから、ハッキリと言ってやる。
「………どうして、」
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