8人が本棚に入れています
本棚に追加
ーーー
ーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーー
「━━━━━━、何でなんだYOッ!?」
此処、静岡県東部のとあるカフェの店内にて。
ただいま、午後三時のお知らせが有線で流れたのと同時に、若い男が怒りで吠えた。
雄たけびが響き渡り、店内の装飾品たちが揺すれる。
この店のコンセプトである、〈おひとりさまでも入れる気軽さ〉、〈茶葉へのこだわり〉、〈ゆったりできる空間〉のトリプルが人気である、中国茶専門店【茉莉花】。
なので、この個人店内の席は三組のみしか席がない。
此処のオーナー曰く、〈本当の一人の時間を楽しんで欲しいから〉ということで予約制のフリータイム式だ。
木製の片開きドアを開けると、まず茉莉花の柔らかな香りが鼻腔を擽り全身を包み込んでくれる。
まるで、第二の自宅に帰ってきたような異国のプライベート空間。
入ってすぐ左側に上着掛けの用のスタンドハンガー。右側に金の刺繍が入った白いスリッパが用意されており履き替えると。オーナー自ら、「おかえりなさい」と中国語の一種である〈上海語〉で出迎えてくれる。
オーナーである彼女は、上海に住んでいたためか七大方言である呉語を使用しているらしい。
その後、予約席へ案内された。
それぞれシノワズリーな雰囲気の目隠し衝立で区切られている。
この空間に溶け込んでいるのか不思議と嫌味がなく、風通しの良いちょっとした個室に出来上がっていた。
そして、空間の味わいを挽立てる軽やかに流れる有線。
流れている中国楽器である〈二胡〉での音楽。このストレス社会で受けた傷を癒してくれる気品さを残しつつ、リラックスさせてくれるサプリ。
この落ち着ける個室じゃない〈個別席〉は、━━━━━なんてプチ贅沢な時間。
注文した〈水仙茶〉に舌鼓をしていた青年、〈神龍時 宇宙〉は歓喜に震えていた。
なのに………、目の前のガサツなチンパンジーは空気読めていないのか、オツムが小さいのか……。
贅沢に味わっている時間をぶち壊したのだ。
最初のコメントを投稿しよう!