ただいま、被害者中。

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「すみませーん。静かにして貰っても良いですかぁ~?せっかくの美味しい水仙茶がマズくなってしまうので。あと、此処大声禁止です」  できる限り、社交辞令で営業スマイルする彼。  だが、邪魔されたのが癪に障ったためか、こめかみに少々青筋を立てている。  周りに設置されている螺鈿細工が美しい品のある黒色の中国茶棚と、丸びおびた深いこげ茶色の中国茶器棚が、怒鳴り声の振動に反応し小さく震える。  それでも、気づかない相手は更に苦情の嵐をぶつけた。 「大声禁止なのは、分かった……。でもな、今回ばかりは苦情言われても仕方ないことをしたんだぞ!君HAッ!!」 「あの~。一つの席で話し合っているので、小声でも聞こえていますから。怒鳴るの止めて貰えます?━━━というか、全然大声禁止なの分かってないじゃないですか……。馬鹿ですか?〈猿堂〉当主」  最後の一言が効いたのか、やっと口を噤んだ。  向かい側椅子に座っている彼、〈猿堂 陽介〉。  厄除師十二支〈猿〉本家の現当主である。  宇宙とは五歳違いの年上で。黒と金髪の半々に染められた短髪ヘアーが特徴的で、ソフト筋肉質の彼。  三年前まで裏稼業である厄除師のシゴトでアメリカへ派遣されていた。  ようやく、シゴトが落ち着き母国である日本へ一時的に帰国することができたのだ。  本来なら大人のお手本を見せなくてはいけないという立場なのに……この有り様である。 (こんな中身が残念でも、当主ってなれるんだ~。ふーん、当主試験もずいぶん甘くなったものだ)  そう冷めた気持ちの中。更に冷めつつなっている水仙茶が注がれている陶器でできた茶器に口をつける。   「宇宙くん……、失礼した。俺が言いたいのは、〈約束していた内容と違う〉ということだ」
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