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普段目じりの下がった人たらしの目つきは鋭く変わり、怒りを露わに宇宙を見据える彼。
その真剣さが物語っているのか、場の空気は亀裂が入ったかのように━━ピシッと悲鳴を上げた。
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「━━━━━と、言いますと?」
そんな俺に物おじせずに、凛とした隙の無さで対応する六つ子の次男坊。その柔らかい微笑みは清々しく悪びれも無い。
寧ろ、感情どころか考えが読めない━━━━のに、相手の纏っている空気が澄んでいる。【無】と言っていいほどにだ。
これが、〈龍〉の本家 参謀と言われている神龍時 宇宙。
しかも、親友であるポンコツ嵐の兄貴であり。俺の想い人である風羅ちゃんの兄貴ときたものだから、達が悪いときたものDA……。
主に後半の理由が、重要だッ━━━!
そんな複雑な思考の渦にいる俺のこと読んでいるのか分からねえが……、沈黙しているこちらにニコリと一つスマイルをよこしやがった。
ぶっちゃけ、野郎のスマイルは要らねえ。それより風羅ちゃんの笑顔がもの凄く切実に欲しいくらいだ!
「あ!もしかして、風羅の笑顔の方が良かったですかぁ?」
その言葉に、ドキリと心臓の鼓動が跳ね上がってしまう。
(なんて、やりづらい野郎……)
年下だからって、子供じゃない。そんな相手とこれからどう〈交渉〉しようか……?
そもそも、約束が違うことが原因だからな……。その理由から聞くべきか?
いや、待てよ!先ほどみたいに、はぐらかさる可能性がある。ここは、誘導して口を割らせるか……
「いや、普通に思ったことを言えば良いんじゃないですか?猿堂さん」
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