0人が本棚に入れています
本棚に追加
「コラージュで自分の持っている世界を表現する。最初は試行錯誤してたけど、だんだん自分らしさの表現の仕方が分かってくると、するする作れるようになったんだ。すると、絵も描けるようになった。こうやって自分の世界を出すんだ! って。思いだした感じだよ」
「よかった」
「え?」
「ユミカの絵、見たかったから」
「あはは、心配かけてたんだね、ごめん」
駅前の改札を過ぎて、二股の道に出た。ここから右が私の家、左がユミカの家だ。
――あーあ、もう分かれ道だ。
「サツキ」
「うん?」
「アタシね。大学はまだ、美大あきらめられないみたい」
「……うん。それでいいと思う。まだあきらめるには早いよ」
「そうだよね。でもねやっぱり将来イラストレーターになれるか、不安だなって思いは残ってるんだ」
「そう」
それは私も一緒。小説家になりたいけど、なれる保証なんてない。それがどれだけ不安か。職種がちがえど、同じ不安だと思う。
「でもね、絵を描くことはやっぱり、アタシから切り離せないことなんだ。だからずっと続けていくと思う。仕事にできるかはわからない。でも、仕事にできなかったとしても、描くことはやめない。自分を表現することは、アタシの生きる上で必要なことだから……ううん、ちがう。やめられないことだから」
ユミカはそう言うと、一歩私の方へと近づいた。そして私の手をそっと取った。
「だから、サツキも。小説家になりたい夢を、あきらめないでね。小説を書くことを、あきらめないでね」
――そしていつか、サツキの小説に挿絵を描かせてね。
ユミカはそう言うと、照れくさそうに笑って、駆けて行った。
最初のコメントを投稿しよう!